【トラックドライバーに聞く、「物流の2024年問題」に関する実態調査】約3割は問題をよく知らず、約8割が勤務先の研修や説明等が不足していると回答。 4月から違反となる年間残業時間960時間超えは1割弱
残業時間の上限規制により約7割が収入減を危惧、約2割が転職や副業を検討
〜約6割は就業規則を見たことがないと回答、約4割が有給を今年まだ未取得〜
社内規程管理クラウドの企業向けサービス「KiteRa Biz(キテラビズ)」と、社労士向けサービス「KiteRa Pro(キテラプロ)」を展開する株式会社KiteRa(代表取締役社長CEO:植松隆史、本社:東京都港区、読み:キテラ、以下「当社」)は、この度、20代以上のトラックドライバー男女600名を対象に【物流の2024年問題に関する実態調査】を実施しました。
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働(残業)の上限が年間960時間に規制されることで起きる『物流2024年問題』が迫る中、トラックドライバーの約3割が『物流2024年問題』を知らない・よくわからないと回答し、約8割が勤務先の研修や説明等が何も行われていない(不足している)と回答するなど、ドライバー自身がこの問題への理解や対応が追いついていない実態が明らかになりました。また、1割弱が毎月80時間以上の時間外労働をしており、このままでは上限規制に違反する可能性が高いケースが一定数あることがわかりました。時間外労働が発生する原因を聞くと、人手不足や仕事量の多さ、残業することが当たり前の環境であることが上位でした。上限規制の施行によって心配することは、収入の減少が最多で約7割でした。また、上限規制により約2割が転職や副業、独立を検討していることが明らかになりました。
一方で、約6割が勤務先の就業規則を見たことがないと回答し、副業や転職など今後の働き方を検討しながらも、現在の勤務先での副業可否や勤務条件、社内ルール等を把握しきれていない様子がうかがえます。また、有給休暇について約4割がこの1年で1日も取得していない実態が明らかになりました。
これらのことから『物流2024年問題』が迫る今、働きやすい環境づくりや従業員のコンプライアンス意識向上のため、就業規則や社内規程やルールの整備や周知の重要性も高まっていると考えられます。
主な調査結果
①50歳以上が60.2%で女性比率は8.0%とドライバーの高齢化や女性比率の低さが顕著。
②ドライバーの77.0%が勤務先で『物流2024年問題』に関して研修や説明といった対策が何も行われていないと認識。
③『物流2024年問題』を「知らない・よくわからない」34.0%、「知っている」66.0%。
④毎月の残業80時間以上は6.3%と、このままでは1割弱が2024年4月に施行される時間外労働の上限規制違反に。
⑤時間外労働(残業)が発生する原因は最多が「人員が足りない」57.8%、次いで「仕事量が多い」55.3%。一方で「収入を増やすため自ら望んで残業」21.2%。
⑥時間外労働の上限規制によって67.3%が収入減少を危惧。「無理な運行・走行計画が立てられる」27.7%、「労働時間帯やシフトの変更」27.3%と労働条件に関する心配が上位。
⑦上限規制により約2割となる19.7%が転職や副業、独立を検討。
⑧勤務先の就業規則を「見たことがない」56.0%で、約6割が副業可否や社内ルールについて把握できていない様子。
⑨約4割となる37.0%が有給休暇を未取得、この1年で有給休暇を1日も取得していない。
詳細
①50歳以上が60.2%で女性比率は8.0%とドライバーの高齢化や女性比率の低さが顕著。
全国の20代以上のトラックドライバー600名を対象にアンケート調査を実施したところ、回答者の年代は20代〜30代の若手は12.1%で、50代以上の年配者が60.2%と6割を占めた。女性比率は8.0%で、ドライバーの高齢化や女性比率の低さが顕著に現れた。
②77.0%のドライバーが勤務先で『物流2024年問題』に関する研修や説明といった対策が何も行われていない(不足している)と認識。
「勤務先で『物流2024年問題』に関して何かしら研修や説明がありましたか」の質問に対し、77.0%が「何も行われていない」と回答。一方で、12.2%が「朝礼や終礼などの場で説明があった」、2.0%が「メールやチャットで説明があった」、7.8%が「研修会や社内勉強会が行われた」、9.0%が「資料の配布や掲示があった」と回答。
③『物流2024年問題』を「知らない・理解していない」34.0%、「知っている」66.0%。
「2024年4月からトラックドライバーの時間外労働(残業)が年間960時間に上限規制されることによって発生する、物流・運送業界の『2024年問題』を知っていますか」の質問に対し回答は、最多が「知っている」66.0%、次いで「聞いたことはあるがよくわからない」25.5%、「知らない」8.5%で、34.0%が『物流2024年問題』に関して理解できていない実態が明らかになった。
④毎月の残業80時間以上は6.3%と、このままでは1割弱が2024年4月に施行される時間外労働の上限規制違反に。
「1ヵ月間で平均どのくらい時間外労働(残業)をしているか」の質問に対し回答は、最多が「40時間未満」74.2%、次いで「40時間以上60時間未満」11.3%、「60時間以上80時間未満」8.2%、「80時間以上」6.3%だった。
年間に換算してみると「80時間以上」は960時間以上となるため、このままでは1割弱が2024年4月に施行される時間外労働の上限規制違反となる。
⑤時間外労働(残業)が発生する原因は最多が「人員が足りない」57.8%、次いで「仕事量が多い」55.3%。一方で「収入を増やすため自ら望んで残業」21.2%。
「時間外労働(残業)が発生する原因は何だと思いますか」との質問に対し回答は、最多が「人員が足りないため」57.8%、次いで「仕事量が多いため」55.3%、「残業をすることが当たり前の環境」34.2%だった。一方で「収入を増やすため自ら望んで残業している」21.2%と残業をしたい人が一定数いることもわかった。
⑥時間外労働の上限規制によって67.3%が収入減少を危惧。「無理な運行・走行計画が立てられる」27.7%、「労働時間帯やシフトの変更」27.3%と労働条件に関する心配が上位。
「時間外労働の上限規制によって心配していることは何か」の質問に対し回答は、最多が「収入の減少」67.3%、次いで「無理な運行・走行計画が立てられる」27.7%、「労働時間帯やシフトの変更」が27.3%で、労働条件や業務内容への影響を懸念する回答が多かった。
⑦上限規制により約2割となる19.7%が転職や副業、独立を検討。
「上限規制により、退職や転職、副業などを予定していますか」の質問に対し回答は、最多が「今の勤務先での勤務を継続する予定」73.5%だった。一方で「ドライバーとして物流他社への転職予定」7.0%、「ドライバーを辞めて異業種(異職種)」7.0%、「副業を始める予定」5.7%、「独立を予定」0.8%と、約2割となる19.7%が転職や副業、独立を検討していることがわかった。また、「その他」の回答の中には、「今はまだわからない」「その時になったら検討する」といった回答が多く集まった。
⑧勤務先の就業規則を「見たことがない」56.0%で、約6割が副業可否や社内ルールについて把握できていない様子。
「勤務先の就業規則を見たことがありますか」との質問に対し回答は、「見たことがない」56.0%、「見たことがある」44.0%だった。副業可否や、上限規制に関する社内規程や社内ルールなどを把握できていない様子がうかがえる。
就業規則を「見たことがない」と回答した人を対象に「就業規則をなぜ見たことがないのか理由を教えてください」と質問すると回答は、最多は「就業規則をどこで見られるかわからないから」36.0%だった。次いで「就業規則を確認する必要がなかったから」31.3%、「就業規則があるのかわからないから」25.3%、「勤務先には就業規則が存在しない」21.7%だった。
また、就業規則を「見たことがある」と回答した人を対象に「いつ頃確認しましたか」と質問したところ回答は、「10年以上前、入社時に確認した」や「覚えていない」との回答が多く寄せられた。
・「入社時に確認した」(20代・女性)
・「休暇取得のために確認した」(20代・男性)
・「覚えていない」(30代・男性)
・「入社時のみ」(40代・男性)
・「数年前の雇用形態変更時に確認した」(50代・女性)
・「覚えていない・入社時に確認した」(50代・男性)
⑨約4割となる37.0%が有給休暇を未取得、この1年で有給休暇を1日も取得していない。
「この1年で1日以上、有給休暇を取得しましたか」の質問に対し回答は、「取得した」62.9%、「取得していない」37.0%だった。約4割が今年まだ1日も有給休暇を取得していないことがわかった。
考察
2024年4月にトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に上限規制されることを受け、『物流2024年問題』が懸念されています。
しかし、今回の調査結果から、2023年10月上旬時点でトラックドライバーに対して雇い主側の対応が追い付いていない様子がうかがえます。
また時間外労働については、6.3%が月80時間以上、うち3.0%は月100時間以上時間外労働をしている実態が明らかになりました。これにより、このままでは2024年4月の上限規制の施行により、規制違反となってしまう企業が一定数存在していることもわかりました。
さらに、上限規制によって約7割が「収入減」を心配する中で、「業務時間の変更」や「無理な運行・走行計画が立てられる」ことを心配する人も約3割存在することが分かりました。トラックドライバーへの働き方改革を目的とした上限規制が逆にドライバーの生活や労働環境をひっ迫させてしまう可能性があります。また、他業種と比較すると有給休暇の取得数の少なさから、働き方改革を物流業界で推進するためには現場における労働環境の改善と同時に従業員への就業規則の周知やガバナンス意識を向上させる重要性が一層高まっていると考えられます。
さらに、転職や副業、独立を検討するドライバーも一定数いる中、全体の56%は就業規則を見たことがないと回答しました。副業を禁止している企業や、同業種への転職禁止・退職届の提出タイミングなど独自のルールを設けている企業もあります。従業員が社内規程やルールを理解しないままでいることは、企業と従業員間のトラブルだけでなく、上限規制の違反や他社への情報漏洩の恐れなど様々な経営リスクになりかねません。
従業員が働きやすい環境を構築し生産性向上を図ると共に、経営リスクの低減やガバナンス向上のためにも就業規則を整備し、従業員への周知を徹底することは『物流2024年問題』が迫る今、物流業界が対応すべきことの一つだと考えられます。 今後も当社は人々が安心して働ける世界をつくるため、社内規程管理クラウド「KiteRa」の提供を通じて従業員の働き方改革の実現に取り組んでまいります。
調査概要
調査名:トラックドライバーの働き方に関する実態調査
対象条件:全国の20代以上のトラックドライバー
調査期間:2023年10⽉9日~10月10日
調査⽅法:インターネットを利⽤したアンケート調査
有効回答数:600名